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美しさとは何か?-[書評] 猫の建築家   森 博嗣  

猫の建築家 (光文社文庫)

猫が静止して、物事を眺めていることがある。
深く、見るともなく見ているあの視線である。
著者は、そんなところから、「猫の美学」を着想したのかもしれない。
文章は軽く、内容はあるような・ないような、詩的な感じ。
イラストには、もう少しバリエーションがあってもいいような気がした。

ただ、造られたままの形ではなく、
造られたときの機能を果たせなくなったものが、
いくつか残っているだけだ。
But there remained things
that had lost their original forms,
that had lost their functions.

機能がないのに形式的に残っているものは、意外と多い。
スーツの袖のボタンなんかは、ただの飾りだ。
あれは、その昔ナポレオンが遠征したときに、寒冷地で兵士たちが袖口で鼻水を拭くのを見て、止めさせるために付けたって話を、どこかで聞いた。
それから付けられたとしたら、我々はいまだにナポレオンから無意識に教育されていることになる。
ナポレオンは、偉大である。
機能がないのに残っているものは、物だけではない。
動物の臓器には、そういった類のものが多い。
人間の盲腸なんかはまさにそれだし、光の届かない深海でも、以前眼だった器官のある動物は多い。
これは、『保険』なのだ。
いつか環境が変わって、必要になることがあるかもしれない。
生物とは、可能性を残しておくものなのである。
イチローのバッティング理論と同じだ。


この謙虚さは、「猫」の羨望である。
All cats admire their modesty.

ここの英語訳にいささか疑問を感じる。
ここは、「All cats」じゃなく、ただの「Cats」ではないかと思う。
この本の表題が、『猫の建築家』であるから、先行条件として「猫」、猫の中の「建築家」ということになる。
すなわち、猫すべてを指すのではなく、猫の中の建築家を指すのだから、もっと丁寧に書けば「cats of architect」ではないかと思う。
しかも「」で猫をくくっているのだから、ただの猫だとは考えられない。
ただの、屁理屈だと思ってください。
しかしながら、英語の文章としては面白い。
こういう文章を英語のテキストとして使ったら、少し暗記する気にもなる。
暗記教育は、現在、嫌われているようだが、学問の基礎は暗記にある。
暗記による、人マネから入るのが、王道なのだ。
まったく新しいものを個人で生み出せるということは、極々稀なことだ。


「美」は、「形」なのか「機能」なのか、それとも「猫」なのか。
What is the reality of "beauty", "form", or"cat"?

美しいということは、それだけで才能であり、利点である。
美人薄命と言うが、それは間違いだ。
美人の薄命だけが物語になるので、不美人の薄命が目立たないだけである。
「美しさ」という観点での選択は、誰もが日常的に行っている。
誰もが、自分にとっての「美しい」方を選択している。
それらの選択が人によって違うから、人生が多様化するのである。
例えば、わたしの身近なことで言えば、本屋に行ったときに、わたしは本の包装にこだわる。
内容が気になる本でも、包装が気に食わない本は買わない。
包装にこだわれない作者の作品など、読む気にならないし、見る気もしなくなる。
こだわりが重要なのだ。
もっと、精神的な例をあげれば、病気との闘い方にも美学が表れる。
闘病するか・静観するかという選択である。
確実に治る見込みのある病気なら、誰でも戦うだろう。
しかしながら、癌の末期だったらどうだろう?
放射線・抗癌剤治療で戦い続けるだろうか?、それとも生活の質を下げない最小限の治療だけで残りの人生を癌とともに生活するだろうか?
この選択はどちらが正しいということはない。
どちらも人生を生きるという意味では、正しい。
ただ、あまりにも前者の選択をする人が多すぎる。これは、メディアの影響が大きいのだろう。
前者が物語りになり、後者が物語りにならないというだけであるのにもかかわらず。
前者が「戦い」で、後者が「逃げ」だという考え方は、間違っている。
こういうニュースもある。

新薬 延命効果わずか

生活の質を下げてまでする治療に意味があるのかを、今考えている。
これは、個人の美学の問題である。


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2010/08/11 17:31 | edit

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